2015年4月11日土曜日

幻影


狂乱の中で私の視界は歪んでいた
なにが病でなにが病でないのかの模索の中で
私は病になることで病を治そうとした
大きな解放と共に私を縛る呪縛は暗闇の中で
微笑を浮かべる 黒い鉛のようなものが
私の体内でうごめき 破滅の舞踏へと駆り立てる
遂には街灯が喋り出し 私の中から数々の欲望が
抜け落ち 桜の色に染まった四月の暖かな日さえも
狂気の声しか掛けなくなった頃 お前が涙を流した
見えない涙に私は溺れ 遂には溺死した
しかしまだ見ぬ革命は私の中でうごめき続け
酒気と共に導線上をたどってくる そいつが扉を
叩くとき ドアスコープ越しに私は問いかける

お前は一体誰だ!

依然物言わぬそいつを迎え出ようと扉を開けるが
どこにもそんなやつは見当たらない
私は街へ繰り出す 街はいつものように黒い人影を吐き出し
狂乱へと吸い込んでいる 暗い酒場で人は存在へと変貌し
男は名も知らぬ女を抱く 私の歪んだ視界は見る見るうちに混濁し
虹彩には灰色だけが残った
友よ 同志よ 詩人よ! お前の色を求めて俺は彷徨っているのだ
今宵俺たちは街の人影の上を 信号機の上を 
遅くまで灯りのついた超高層をも越えて彷徨おう
世界をつなぐ貿易船も 遥か彼方の日の出をも
100億光年の孤独をも越えて 彷徨い歩こう
深い水底に沈んで声を出せなくなってしまうその前に
友よ 同志よ 詩人よ 彷徨い歩こう


(Kohsuke)


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