2015年9月27日日曜日

眠りの中に眠るある夜に


                           ジャスティンへ

粘土質の土に愛は育たない
そう       思いつつも
石として生まれた石をシャベル代わりに
お饅頭大のドリアンを植えた
この子は不揃いの石に囲まれた
拾われた石たちは偏に座る

ジャスティンは遠目にも笑顔だった
「ドリアンから芽を出す嘘は
嘘から芽を出す嘘よりタチが悪い」
そう言った       気がした

眠りの中に眠るある夜
僕は眠る日を決めた
11日のベルがなったら僕は眠ろうと思う

向かいにあるロビンソンへは陸橋を
渡っていく        上から2段目の階段 
いつもの子だ!   砂埃を操る男の子
          「マニー   マニー」
子どもとは思えない低い声で手を差し出す
下りには女の子
          「マニー   マニー」
僕を僕とは知らない女の子
彼女の目に映る景色に合う色は何色だ
考えは及ばず
黄色い驟雨が差し迫る空から降り注いだ
本日は晴天なり
11日のベルがなったら僕は眠ろうと思う

一昔前    頭の片隅にある私立図書館で
理想の女性の手引きを読んだ事がある
その時はレンタルカードを瞼の上に
置き忘れ    本は借りられなかった
記憶は消える予定を記録している
           本は目の前だ!
今日という日    ジャスティンは僕に
アナベルリーという女性を返却した
11日のベルがなったら僕は眠ろうと思う

ピエロ  舞台  ジプニー バヤポ  ナチョス 
高速道路  排気ガス  埃  夕焼け  墓地  花  戦闘機  
停留所  インコ  植民  教会  パラポ  魔法  ピエロ

僕はジャスティンにハグをした
翌朝ドリアンは芽を出した
11日のベルがなったら僕は眠ろうと思う

試食コーナー     一口大に切られた梨
5歳くらいの男の子 隣はたぶんお姉ちゃん
背丈は僕の腰くらい
ぱくぱくと口に頬張るその姿    嬉しげだ!
美味いかと聞くと「おいしい」とうなずく
「お兄ちゃん!ようじあと1本しかないよ!」
                                                   と僕にくれた
みずみずしく  さっぱりした甘さ  確かな甘さ
美味いよと頷いた               梨は買わなかった

誰がためにベルはなる、

               
                2015年9月 パンパンガ州 クラーク



だいち


2015年7月20日月曜日

愛雨


冷たく湿った風が
私の肌をそっと撫でる
私を傷つけることもなく
私を苦しめることもなく


蝉の鳴き声が耳を刺す
雨雫をまとった紫陽花は
枯れて刈り取られてしまった


私を撫でるこの風も
いずれどこかへいってしまうのだろうか
この冷たさも
この感触も





Pan

2015年5月11日月曜日

根っことソネット






クレソンという名を聞いたとき
しどろもどろな根っこを引っこ抜かれた
触れた言葉は戸惑う頭の隅
触れたことない手と踊りだし

老人をかぶった若者の足跡の先
清流の隅っこに生える名前を導かれた
冷えた言葉は悴む指の端
するりと抜ける根の感覚と歌いだし

影を作る明日の満月と骨組みの変わらない傘
忘れてもソーセージは待っている
食べようぞ クレソンを添えて

コーヒーの香りが起こす朝
ひとは根っこを生やしに出掛けてく
年輪を泳ぐ魚と白鯨のキスを忘れて



20155
蓼科 パルナソス にて





だいち

2015年4月23日木曜日

胡麻



なんだ、団子か
味なんて そんなのどうだっていい

やつらは真っ黒な胡麻ダレを身体に塗ったくって
甘い香りで誘うんだ
何したって中身は真っ白のまま
なんも変わっちゃいない

よし、みんなまとめて串刺しだ
うまかろう











Pan

2015年4月21日火曜日

これは詩ではない


         
             「イメージの裏切り」に寄せて


これは詩ではない
ただの言葉の連なりであって

これは言葉ではない
ただの文字の連なりであって

これは文字ではない
ただの線の連なりであって

これは線ではない
ただの点の繋がりであって

これは点ではない
ただの紙に映る夜空であって

これは夜空ではない
ただのパイプであって

パイプはパイプでなくて


2015年4月19日




だいち

2015年4月19日日曜日

箱庭

おはよう、の四文字が無くなる時
本の館に火を付ける時
子犬が子犬でなくなる時
煙が水に変わる時
音楽が騒音に変わる時
キャンバスにナイフを突き立てる時

青くて丸い箱庭の中で生きるしかない僕たちは
気まぐれに注がれた砂糖水のなかで
溺れ死ぬしかないのだろうか。


 L
(4月5日、2015年、10時16分の5時間前)


   粘着質ノ鎖 切リ落トシテ
    
      ミチ ヘ

   ドコカデ ミチ ハ チ ヘ

      生キルタメノ チ ヘ



        (kohsuke)




18042015

何杯飲んだってそれはゴミ捨て場の缶になるだけだ

だれかが見つめていた

どこかへ消えた彼のことを

リアリスト達はそう考える

ふと思い出す寂しい月明かりの下

会社の解釈を探して

おぼろげな蝋燭の火に溺れる

迷うはクエスチョンマークの森

探しても探しても探し出せない

迷路の中に ロックグラスの氷が響く

一cm四方の命を求めて

美しい森は叫ぶ

からんころんからんころん

神の呼ぶ声 エアコンの断末魔

どんな答えもいつも

あぁ春だじゃなぁ

いや 夏だじゃなぁ

いやいや 秋だじゃなぁ

あるときは冬だじゃなぁ

やっぱり春かねぇ

時の流れに

とりあえず5日目までは生き残れた

決めるのはいつも

春だ

あぁ今日も雷雨だじゃなぁ

あなたのこころのなか

老いた赤ん坊の泣き声が

響く呼吸のなか あなたは今日も落ちてゆく

こころこころここにあらず。

あぁ

そうか

さよならしよう

一本の木の上に雷鳴轟き

離れた道は川を越え

彼の思いは儚く散る

桜舞う春の夜の夢。



(Peyote and Meg and Daichi and Hatano and Lee and Koh)




束の間

酒が空いたあとふと思う

トイレの流れる音 すべてが流れていく

ガラガラの我らの声と共に

詩人の声は新しい缶の開く音

缶の中身はなんぞや

それはベッドの下 ベランダから聞こえる声の秘密

わずかに見える彼らの面影

隣人には見えないだろう

私たちにしか見えないのだから

行き先を忘れた我らの思いはそこに集まる

同じ豚肉を食べた私たちの耳にしか聞こえない

食べた豚の声はもはや聞くことはないけれど

缶の潰れる音

今までもこれからも私たちはその責任を負う



(Lee and Hatano)



画家を描く

燃える夕日が水平線と溶け合う頃
麦畑が広がる大地で
一人の男が赤を垂らしたパレットを手に
一つの風景を多種な世界のために残す
広大な麦の存在に飲まれ
立ちくらみ
もみくちゃにされ
膝をついても
再びパレットに赤をつぎ足し
筆を振るう

ある子供が歩き方を覚えた頃に丸を描いた
彼の母は古くなった壁に、
しかし彼女が毎日立つキッチンに、
その絵をテープで貼り付けた
そして子供は再び丸を描き始めた


(yutaka)

2015年4月17日金曜日

16042015 -02-

就活、カツ丼にしてやりてぇ

腐った卵でつつみてぇ

乱雑に切った玉ねぎ入れてよ

衣だらけの薄切りロース入れて

みじん切りした忠誠心と魂入れて

ワンコインのワインで煮詰めよう!

隠し味に昆布ぽん酢

家庭の味は忘れない

換気扇なんかつけねえよ

タバコにマリファナ、シーシャがひとつ

マッカランをロックで一杯

スーツの男は咽びかえって消えてゆく

そいつはラップに包んで

ゴミ箱にしまっておこう

 (俺は道端に倒れてる)

 (そのままおやすみなさい)

気づけば青空酒場

隣には空っぽのワインボトル

笑い声と叫び声が詰まっている

刻まれるビートと青年は平行線

小山の木々とトイレとわたし

桜の木の下には燕尾服を着たホームレス

リュックサックに背負われた人間は

指揮棒に合わせて手足をぶらつかせる

その体が奏でる音色は

まばゆいばかりの夢物語

酒の息とともに消えてゆく

ベンチの温もり

足元には丸まったダンゴムシ

三回足踏みして潰す

終電の挨拶に目次はいらないわと

桜色のペンキを振りまく君

十字架になって眠ろう

酒瓶ひっくり返して

アスファルトと乾杯


(だいち こうすけ りさ あやこ)

16042015 -01-

プラネタリウム

LEDの芸術に心が腐る

キザなセリフを言いたくて

3日前から練習していた

ヘラクレスは近くで見守り

エルサレムでは大雨が降っていた

傘をさして惑星でけん玉をする

赤色灯との終わらないダンス

串刺しになったガニメデとイオは赤く染まり

16歳の眼惑星も赤く染まる

火星の友達は気にしてはいないさ

ほうき星に乗ってしまえばいいのだから

星を食べて月を食べる朝

ヘラクレスが殺された

彼の魂は星雲の彼方に吸い込まれ

孤独と鼓動が木霊する

星座の船団は消え去った

すばるのような豆電球はショートして

おおきな太陽があらわれる

陽光で僕の目は潰れる

が君の目はまだ星雲を眺めている

(星は目、目は星)

遠くの空でガスが燃える音が聞こえる

都会を走る冥王星の足音

がだんだんと近づいてくる



(Daichi and Lisa and Koh)




2015年4月15日水曜日

あめだまのうた





らんどせるをしょって
ともだちとげこうする
もらったあめをなめながら
きのうみたてれびのはなし
おんなのこはおさとうと
すぱいすとすてきなもので
できてるって
おもしろくって
おもわずあめだまは
そとのせかいへとんでった
からんからんって
おとをたて
さんびょうるうるだって
しゃがんでひろう
だけどやっぱりちょっぴりきたない
だけど
つちはついてない

つちのついてないあめだま

ちょっぴりかけたあめだま
ほんのりあまいいちごあじ






だいち

落日と

おれのいる場所まで落ちてきてよ
一緒にここで暗闇をすすって暮らそう
明かりを冷凍庫に閉まって過ごそう









ごめんなさい
やっぱりそこにいて下さい

ラブレター



バンドエイドをきつく巻きすぎてしまった時のように、薬指がキツくなってきたキミ。
その服、そろそろ飽きてきたんだって?
今流行りの花柄がよく似合うキミ。
テレビを見るたびに、
デジャヴ、
    デジャヴ。
アンディ・ウォーホルのポップ・アート。
レディ・ガガのアート・ポップ。
コピー、
   コピー。

暖かいから、
ペールトーンの
歩くコピー&ペースト。
「オンリー・ワン」の
          無限ループと
亜麻色の髪の乙女 with つけまつげ。

毒リンゴをポケットに忍ばせて、練習してきた魔法の呪文を唱えると
セイレーンが茶色の海から現れる。
彼女の透き通るような声は
                     オリコンチャート第一位。

ああ、なんて楽しい世界に生きているんだろうね。
上空1万メートルのすみれ色のプリズム効果の奇跡と
          キミとボク。
会いたくて震えると呟けば心臓が習いたてのダンスをする。
小指と小指に繋がる
L I N E
という名の電波。

ロミオとジュリエット・イン・ジャパン。
キミがいなくなってしまうなら、
              ワタシも消える、
    なんて
まっぴら ごめんだ。

こうして右手をグラファイトで真っ黒にして
無口の色白の相棒と、
ペプシとウイスキーがあれば十分なんだよね。


L
(麗しい卯月の12日目、2015年)

(resurrection)

at least i should’ve brought
a magazine with a naked woman on;
i am bored to death eating ants
breeding in my right hand
O, man, what’s taking so long

 (Hitoshi)

15042015 -01-

たまには違うのもいいかもしれない

たまにはね

いつも同じワインを同じ場所で飲んでいる

同じ音楽を聴いていた

知り合いの声がこだまする

ふと耳を塞いでみると、

心臓が揺れている

あいつの影が見える

しかし夜の闇がそいつの影を消し去るだろう

依然心臓はおかしいほどに揺れているのに

頭の中は至って冷静

わたしにはどうすることもできない

建設中のビルの上でカラスは鳴いている

しなしなになったハンバーガー片手に

黒い子供たちに子守唄を聞かせる

少量の毒を盛った身体にワイドショーは虚しく騒ぐ

    いい子だ、そろそろ寝る時間だよ

    また明日から同じ毎日が始まるのだから

暗い部屋の片隅であいつの影が揺れている

    そういえば
  
    あれはどこにやったっけ

去年の春休みに家の庭に埋めてしまったのに

誰もいない布団のなかに探しにもぐる

暖かい闇の中に包まれて

今日もまた見つけられずに、一日は終わる

カーテンは閉じたまま――


(L and Pan and Koh)













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15042015 -02-

今日、この草原で鶏が最後の鳴き声あげた

フライドポテトアゲイン!と

泉の中から現れたミューズは

ウィリアム・バロウズの銃声にびくついている

ボウルダーを越えて
            こちらに向かってきた

その頃サバンナでは

谷川俊太郎のミューズが夕陽を背に飛んでいる

インスピレーションなんかクソ喰らえ

モン族の作り出す色鮮やかな刺繍

を首に巻いたフランク・オハラはフランクフルトをかじる

サビエルラッドも狂い出す

チャーリー・パーカーも狂い出す

アレン・ギンズバーグも狂い出す

ボブは冷静だった

水タバコがもう無くなった

シーシャアゲイン!と叫ぶ

マリファナの煙を吸って

シラフに戻る

耳に目に残る狂気の足跡

スーツを着た野蛮人は、

スーツを脱ぎ燃やす

燃えかすから生まれる不死鳥が笑う

革靴が濡れても構わない

この毛皮のコートさえ濡れなければ

それがどうしたっていうんだ?

道端のタンポポに説教を食らって

ゴーヤの苦さを噛みしめる


(L and Pan and Koh)






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ネクタルに沈む



バスタブで息絶える僕の友人は

薬臭い息で歌いだす!

僕より健康的だ

僕は毎朝五時に起きる

病人どもは病床に臥した

僕はベッドの上でワルツをおどる

緊急ボタンが押されたようだ

せっかく朝陽が僕にスポットライトを浴びせたとこだったのに

ベンゼドリンを抱えたナースが駆けつける

カフェインとともに流し込む

君とこの杯を交わしたかった

かつて君の唇は聖なる毒で湿っていた

濡れる目元

汚れた神聖なバスタブ

臙脂色の布巾

錆びてゆく

これにて契約は終了



(L and Pan and Koh)












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2015年4月12日日曜日

日は続く

玄関にぶら下げられたオレンジの裸電球
眠たそうに瞬きを繰り返す

朝焼けの中の少女
伝書鳩と
彼を運ぶ風の無事を祈り続ける

なびく桃色のマフラー
誓いを立てた
彼女の柔らかな首を守ろうと


世界を震わせる声で噂を流すヨセミテの山々
森をくぐる旅人が
誕生したばかりの詩の産声を
吹き口の欠けたフルートに乗せて
闇に響き渡らせた

穏やかな月光も相まって
ココペリたちの宴にぴったりの夜となった
その上で月はゆっくりと、だがしっかりと、
大地の裏側へと向かった


約束の日へ進んでゆく
始まりの場所から終点へのカウントダウンは始まっていた
気がついたのは出発から60日が過ぎようという夜だった

湧き上がるファンファーレと
全てを攫おうとする黒い影
その青春という情熱に身を焦がしながら
また一つ
腐葉土の上に足跡を残す



(yutaka)

2015年4月11日土曜日

幻影


狂乱の中で私の視界は歪んでいた
なにが病でなにが病でないのかの模索の中で
私は病になることで病を治そうとした
大きな解放と共に私を縛る呪縛は暗闇の中で
微笑を浮かべる 黒い鉛のようなものが
私の体内でうごめき 破滅の舞踏へと駆り立てる
遂には街灯が喋り出し 私の中から数々の欲望が
抜け落ち 桜の色に染まった四月の暖かな日さえも
狂気の声しか掛けなくなった頃 お前が涙を流した
見えない涙に私は溺れ 遂には溺死した
しかしまだ見ぬ革命は私の中でうごめき続け
酒気と共に導線上をたどってくる そいつが扉を
叩くとき ドアスコープ越しに私は問いかける

お前は一体誰だ!

依然物言わぬそいつを迎え出ようと扉を開けるが
どこにもそんなやつは見当たらない
私は街へ繰り出す 街はいつものように黒い人影を吐き出し
狂乱へと吸い込んでいる 暗い酒場で人は存在へと変貌し
男は名も知らぬ女を抱く 私の歪んだ視界は見る見るうちに混濁し
虹彩には灰色だけが残った
友よ 同志よ 詩人よ! お前の色を求めて俺は彷徨っているのだ
今宵俺たちは街の人影の上を 信号機の上を 
遅くまで灯りのついた超高層をも越えて彷徨おう
世界をつなぐ貿易船も 遥か彼方の日の出をも
100億光年の孤独をも越えて 彷徨い歩こう
深い水底に沈んで声を出せなくなってしまうその前に
友よ 同志よ 詩人よ 彷徨い歩こう


(Kohsuke)


408時間 (あるいは1468800分)


早すぎる野良犬の挨拶と、遅れまいと続く鶏の返事。
カーテンの隙間。
電気仕掛けの真っ赤なサルと目があった。
とうとう朝になったので、甘すぎるパンを食べにリビングへ。
割れた窓ガラスから見えたのは、
蜘蛛の巣を被ったマリア像の後ろへ隠れる、火薬銃を手にした少年と、
クリスマスソングを歌う半袖の少女たち。
頭痛が起こりそうなほどの賑やかのゲームアーケードを建てたのは、
メガネをかけた無口の叔父さん。
ソファに座るおばあちゃんと、ロック・ミュージック。

白すぎるコーヒーを飲みほす。
それからメーターの壊れたバイクが走り出すと、とうとう訪れた19日、1035分。
それでは、また会いましょう。
ベルの鳴らない教会の前で。

L
2015年、フィリピン、レガスピにて。