2014年10月17日金曜日

8枚目のキャンバスを前にして

夜明けの波から生まれた風のナイフが

すっと雲に切れ目を入れるとき

こぼれ落ちるあの色が欲しい。

ネコ屋敷の庭にある樹の香りにあらぬ妄想

手には赤いチューブが一本。


ヒビ割れたアスファルトが染まるその色は

あの子の手帳カバーのようで

カゼ薬のようで

囚人服のような色だった。

黄色いチューブを持っているのは誰?

筆もパレットもいらない

作り方は知っているから。


太陽があくびし始めるときの

目にしみるあの色が欲しい。

あと8分すれば消えてしまうから

甘酸っぱい果実だけではもの足りないから

黄色いチューブを持っているのは誰?

私には赤いチューブしかないのだから。

L
09182014
富士山の近くでワイン等を嗜みながら

2014年5月16日金曜日

からのなか


吐き気を催す親友にすがるしかないと君は言う
ならば君は自分のかけらさえもみいだせないだろう

城の中で君主を気取っていてもパレードの中では群集の一人
十字架をかかげる病院で君は注射器の毒で殺される

スーツで二重あごの男は君に億万の富を約束する
母親がくれる涙は全部排水溝の中に流れていく

こんな馬鹿な気持ちをどうしようか
私は友と呼べる人もいないのだ

2014年5月5日月曜日

落下



ペンシルバニアからピオリアへ
国境のスタンプで真っ赤になった小包を運ぶボーイング

88セント ウイスキーを垂らしたブラックコーヒー
をぐいっと喉に流しこむ 

胃腸に空虚な穴があく
蛆がわく 歓楽街でダンスする

時計台の映画スター
まっさかさまに落ちていく

死に神に足りないのはユーモアだけだと
ぼやいた詩人も落ちていく

渋谷のスクランブル交差点の中心にブラジル行のメトロが走る
まっさかさまに落ちていく

ひと ひと ひと ひと ひと エトセトラ
古い友達 手を振って別れたあとでピエロの化粧をおとしている

穴があったら落ちればいい
どこまでも どこまでも落ちればいい

重力の法則を塗り替えればいい
いつまでも いつまでも塗り替えればいい



2014年5月3日土曜日

5月1日木曜日



第一


夜の公園で友と飲む
盲目の女優の噂をする

朝日浴びるまで盆踊り続く
街路樹を走り抜ける黒猫は眠らない

口から吐き出すスーツのような
テプラポルンと夜の列車を見送る

ポケットの中の相棒は息絶え絶えに
耳元で君の囁きと叫びを感じる


KHMSYLM