2015年5月11日月曜日

根っことソネット






クレソンという名を聞いたとき
しどろもどろな根っこを引っこ抜かれた
触れた言葉は戸惑う頭の隅
触れたことない手と踊りだし

老人をかぶった若者の足跡の先
清流の隅っこに生える名前を導かれた
冷えた言葉は悴む指の端
するりと抜ける根の感覚と歌いだし

影を作る明日の満月と骨組みの変わらない傘
忘れてもソーセージは待っている
食べようぞ クレソンを添えて

コーヒーの香りが起こす朝
ひとは根っこを生やしに出掛けてく
年輪を泳ぐ魚と白鯨のキスを忘れて



20155
蓼科 パルナソス にて





だいち