2015年4月12日日曜日

日は続く

玄関にぶら下げられたオレンジの裸電球
眠たそうに瞬きを繰り返す

朝焼けの中の少女
伝書鳩と
彼を運ぶ風の無事を祈り続ける

なびく桃色のマフラー
誓いを立てた
彼女の柔らかな首を守ろうと


世界を震わせる声で噂を流すヨセミテの山々
森をくぐる旅人が
誕生したばかりの詩の産声を
吹き口の欠けたフルートに乗せて
闇に響き渡らせた

穏やかな月光も相まって
ココペリたちの宴にぴったりの夜となった
その上で月はゆっくりと、だがしっかりと、
大地の裏側へと向かった


約束の日へ進んでゆく
始まりの場所から終点へのカウントダウンは始まっていた
気がついたのは出発から60日が過ぎようという夜だった

湧き上がるファンファーレと
全てを攫おうとする黒い影
その青春という情熱に身を焦がしながら
また一つ
腐葉土の上に足跡を残す



(yutaka)

2015年4月11日土曜日

幻影


狂乱の中で私の視界は歪んでいた
なにが病でなにが病でないのかの模索の中で
私は病になることで病を治そうとした
大きな解放と共に私を縛る呪縛は暗闇の中で
微笑を浮かべる 黒い鉛のようなものが
私の体内でうごめき 破滅の舞踏へと駆り立てる
遂には街灯が喋り出し 私の中から数々の欲望が
抜け落ち 桜の色に染まった四月の暖かな日さえも
狂気の声しか掛けなくなった頃 お前が涙を流した
見えない涙に私は溺れ 遂には溺死した
しかしまだ見ぬ革命は私の中でうごめき続け
酒気と共に導線上をたどってくる そいつが扉を
叩くとき ドアスコープ越しに私は問いかける

お前は一体誰だ!

依然物言わぬそいつを迎え出ようと扉を開けるが
どこにもそんなやつは見当たらない
私は街へ繰り出す 街はいつものように黒い人影を吐き出し
狂乱へと吸い込んでいる 暗い酒場で人は存在へと変貌し
男は名も知らぬ女を抱く 私の歪んだ視界は見る見るうちに混濁し
虹彩には灰色だけが残った
友よ 同志よ 詩人よ! お前の色を求めて俺は彷徨っているのだ
今宵俺たちは街の人影の上を 信号機の上を 
遅くまで灯りのついた超高層をも越えて彷徨おう
世界をつなぐ貿易船も 遥か彼方の日の出をも
100億光年の孤独をも越えて 彷徨い歩こう
深い水底に沈んで声を出せなくなってしまうその前に
友よ 同志よ 詩人よ 彷徨い歩こう


(Kohsuke)


408時間 (あるいは1468800分)


早すぎる野良犬の挨拶と、遅れまいと続く鶏の返事。
カーテンの隙間。
電気仕掛けの真っ赤なサルと目があった。
とうとう朝になったので、甘すぎるパンを食べにリビングへ。
割れた窓ガラスから見えたのは、
蜘蛛の巣を被ったマリア像の後ろへ隠れる、火薬銃を手にした少年と、
クリスマスソングを歌う半袖の少女たち。
頭痛が起こりそうなほどの賑やかのゲームアーケードを建てたのは、
メガネをかけた無口の叔父さん。
ソファに座るおばあちゃんと、ロック・ミュージック。

白すぎるコーヒーを飲みほす。
それからメーターの壊れたバイクが走り出すと、とうとう訪れた19日、1035分。
それでは、また会いましょう。
ベルの鳴らない教会の前で。

L
2015年、フィリピン、レガスピにて。

2015年4月10日金曜日

[the rat king knocked on my iron door]


the rat king knocked on my iron door
and said, “time’s up, get your ass off the bed”
i stood up wishing for breakfast
—bacon and eggs would be perfect, and a cup of
coffee—nine years had passed since the last time I’d drank coffee

no milk, no sugar, I only drink coffee when I drink coffee,

that’s what she said every single day at the breakfast table, she drank
coffee as if it was a gift from God or something
and it goddamn was—
at the time i could never imagine myself

standing in the darkness,
waiting for another darkness,
thinking about breakfast





(Hitoshi)















2015年4月7日と8日のあいだ


日の出ずるクソの国からこんばんは

鮨詰め列車も今日はおしまい

金属の根を張る線路の金切声は徐々に薄れてゆく

隣のおやじが笑い出す

その笑い声が頭にこだまする中、僕はサバンナに住むあの子の横顔を思い描く

意識はこの箱のごとく揺れている 一杯の水が欲しい

たった一杯の水を求め、真夜中のコンクリートの荒野を彷徨うこと5時間

いびきのうるさい嗚咽たちが僕の道を包む

次第に消えてゆく手と足の感覚

まだ見ぬ革命の影が街灯の裏にこぼれている

この国に再び日は昇のだろうか

サバンナにいま日は昇っている

荒地の住民が目を覚ます頃には

僕らは短い眠りに急かされる


L and K

2015年4月1日水曜日

春の発芽



春の発芽


でも

こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。

「黒担々麺2辛に半ライス」
注文は決まっている。カウンターに座って冷やを飲む。薄暗い店内には客ひとり、わたし。店員は新人だろうか。名札にシューリアリストと書いてある。
「担々麺5辛中盛りお待たせしました」
差し出すそいつはタバコに火をつけ、酒瓶にゴキブリをつめていた。グリストラップを開け、こちらを向いてにっこりスイカの歯を見せる。声をかけるとそいつは文章になった。

でも

こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。

客の名は大地といったっけ。
人はあいつを本でよく取り上げる、有名になったものだ。ピエロの様にすっかり細くなっちまったがな。

でも

こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。

猫に名前をつける少女は猫に名前をつけられている。私が一言にゃあと泣けば、ご飯は目の前に。ところで私の玉はいつ戻るのかい。山積みの本の上で待つのは退屈さ。構ってくれよ、陽気な猫さん。
go light
go light
go light

でも

こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。

400ccのバイクに乗った坊主は地球Bに手紙を届けに行ったと聞いた。目的地は星の先にある。風の便りは風の中。

でも

こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。

詩人よ!詩人よ!ああ、憎むべき詩人よ!
子羊に馬鹿野郎と吠えるものよ!星を食べる17歳よ!アルコールを受け付けないものよ!床にひれ伏し謝罪するものよ!テレキャスで切れたカッティングを弾くものよ!ひまわりを心に貯めるものよ!地下鉄を駆け下りるものよ!スーパーマーケットの青果担当のものよ!べらぼうにいかしたはだかの男よ!

でも

こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。
ちく、たく、
ちく、たく、
歩いても歩いても
お前らはいない。

遅かったよ、

みーんな
詩人になっちまったさ。


2015年3月29日日曜日

沈黙にて


逢魔が時
縄文の木を眺めて抱く
黄梁一炊の夢

ご先祖様がはじめてこの大地に
足を踏み入れたとき
かつてここには戦いがあった
流離いを終えて 人が人として生きられるための戦い
血と泪が土に滲み
祈りと畏敬がそこに残った

鳥は光を渡り
魚は闇をくぐり
人は火を囲み
共に愛と祈りの旋律を奏でた

――地球は何回まわったか
土に滲みた血も泪も祈りも忘れて土に触れる者たちに
私たちは手懐けられるだろう
     流浪を強いられるだろう
永遠の谷川の音と祈りを涸らしてゆく人知の愚かさよ
この惑星は故郷ではなかったか――

――逢魔が時の空に
邯鄲の夢は産声と共に還ってゆく
縄文の木が 泪を落とす
私の頭にぽつりと落ちる
私の泪が土に滲みる





深々とした雪のなか
お薬師様が祀られているお堂へ向かう私のことを
鹿は 木は 山は 見つめていた

古い小さなお堂の横には大きな針葉樹と石燈籠
背後には大きな岩があり
その上にお不動様が鎮座して居られる
これらは皆 いつからここに居られるのだろう

小さな銅鑼を鳴らし        手を合わせる

風が銅鑼の音を拾い
      雪を宝石のように舞い上げながら
                  遠くの峰まで運んでゆく

私から言葉が消える――


遠くを見遣ると 鹿が二頭 こちらを見つめている

(ここには言葉など存在しない
 私を見つめる 視線があるのみ)

その夜私は 大岩の上の熊と
満天の星空が婚礼をあげる夢を見た





声が一つ 俺に飛び込む
無意識に 泪が溢れ出る
山を霞めるこの靄は 俺の記憶か
道端で泣いているスズランの花は 昔の俺か
胸がぽっかりと空いたその瞬間
勢いよく風が吹き 日の出が虹彩を突き刺した
俺の身体が燃えてゆく
一本の枯草のように 無力に 焼かれてゆく
太陽がたぎり昇る
記憶が焼かれて叫んでいる 幼い俺が燃えながら叫んでいる
そして今こうして鼓動しながら焼かれて叫んでいる
言葉は絶えた
おまえは劫火につつまれ叫ぶ 失いがちに
聞け!おまえの叫びに皆がたぎる!
俺たちはひとつの共鳴箱のなか
響きあう共鳴体
俺たちはひとつの大きな目のなか
見つめあう水晶体
俺とおまえは響きあう 見つめあう
俺とおまえはここにいる
曙のなか


(Kohsuke)