2015年4月1日水曜日
春の発芽
春の発芽
でも
こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。
「黒担々麺2辛に半ライス」
注文は決まっている。カウンターに座って冷やを飲む。薄暗い店内には客ひとり、わたし。店員は新人だろうか。名札にシューリアリストと書いてある。
「担々麺5辛中盛りお待たせしました」
差し出すそいつはタバコに火をつけ、酒瓶にゴキブリをつめていた。グリストラップを開け、こちらを向いてにっこりスイカの歯を見せる。声をかけるとそいつは文章になった。
でも
こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。
客の名は大地といったっけ。
人はあいつを本でよく取り上げる、有名になったものだ。ピエロの様にすっかり細くなっちまったがな。
でも
こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。
猫に名前をつける少女は猫に名前をつけられている。私が一言にゃあと泣けば、ご飯は目の前に。ところで私の玉はいつ戻るのかい。山積みの本の上で待つのは退屈さ。構ってくれよ、陽気な猫さん。
go light
go light
go light
でも
こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。
400ccのバイクに乗った坊主は地球Bに手紙を届けに行ったと聞いた。目的地は星の先にある。風の便りは風の中。
でも
こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。
詩人よ!詩人よ!ああ、憎むべき詩人よ!
子羊に馬鹿野郎と吠えるものよ!星を食べる17歳よ!アルコールを受け付けないものよ!床にひれ伏し謝罪するものよ!テレキャスで切れたカッティングを弾くものよ!ひまわりを心に貯めるものよ!地下鉄を駆け下りるものよ!スーパーマーケットの青果担当のものよ!べらぼうにいかしたはだかの男よ!
でも
こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。
ちく、たく、
ちく、たく、
歩いても歩いても
お前らはいない。
遅かったよ、
みーんな
詩人になっちまったさ。
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