2015年4月10日金曜日

2015年4月7日と8日のあいだ


日の出ずるクソの国からこんばんは

鮨詰め列車も今日はおしまい

金属の根を張る線路の金切声は徐々に薄れてゆく

隣のおやじが笑い出す

その笑い声が頭にこだまする中、僕はサバンナに住むあの子の横顔を思い描く

意識はこの箱のごとく揺れている 一杯の水が欲しい

たった一杯の水を求め、真夜中のコンクリートの荒野を彷徨うこと5時間

いびきのうるさい嗚咽たちが僕の道を包む

次第に消えてゆく手と足の感覚

まだ見ぬ革命の影が街灯の裏にこぼれている

この国に再び日は昇のだろうか

サバンナにいま日は昇っている

荒地の住民が目を覚ます頃には

僕らは短い眠りに急かされる


L and K

2015年4月1日水曜日

春の発芽



春の発芽


でも

こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。

「黒担々麺2辛に半ライス」
注文は決まっている。カウンターに座って冷やを飲む。薄暗い店内には客ひとり、わたし。店員は新人だろうか。名札にシューリアリストと書いてある。
「担々麺5辛中盛りお待たせしました」
差し出すそいつはタバコに火をつけ、酒瓶にゴキブリをつめていた。グリストラップを開け、こちらを向いてにっこりスイカの歯を見せる。声をかけるとそいつは文章になった。

でも

こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。

客の名は大地といったっけ。
人はあいつを本でよく取り上げる、有名になったものだ。ピエロの様にすっかり細くなっちまったがな。

でも

こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。

猫に名前をつける少女は猫に名前をつけられている。私が一言にゃあと泣けば、ご飯は目の前に。ところで私の玉はいつ戻るのかい。山積みの本の上で待つのは退屈さ。構ってくれよ、陽気な猫さん。
go light
go light
go light

でも

こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。

400ccのバイクに乗った坊主は地球Bに手紙を届けに行ったと聞いた。目的地は星の先にある。風の便りは風の中。

でも

こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。

詩人よ!詩人よ!ああ、憎むべき詩人よ!
子羊に馬鹿野郎と吠えるものよ!星を食べる17歳よ!アルコールを受け付けないものよ!床にひれ伏し謝罪するものよ!テレキャスで切れたカッティングを弾くものよ!ひまわりを心に貯めるものよ!地下鉄を駆け下りるものよ!スーパーマーケットの青果担当のものよ!べらぼうにいかしたはだかの男よ!

でも

こいつじゃあない。
そうして
歩く、歩く、
ちく、たくと。
ちく、たく、
ちく、たく、
歩いても歩いても
お前らはいない。

遅かったよ、

みーんな
詩人になっちまったさ。


2015年3月29日日曜日

沈黙にて


逢魔が時
縄文の木を眺めて抱く
黄梁一炊の夢

ご先祖様がはじめてこの大地に
足を踏み入れたとき
かつてここには戦いがあった
流離いを終えて 人が人として生きられるための戦い
血と泪が土に滲み
祈りと畏敬がそこに残った

鳥は光を渡り
魚は闇をくぐり
人は火を囲み
共に愛と祈りの旋律を奏でた

――地球は何回まわったか
土に滲みた血も泪も祈りも忘れて土に触れる者たちに
私たちは手懐けられるだろう
     流浪を強いられるだろう
永遠の谷川の音と祈りを涸らしてゆく人知の愚かさよ
この惑星は故郷ではなかったか――

――逢魔が時の空に
邯鄲の夢は産声と共に還ってゆく
縄文の木が 泪を落とす
私の頭にぽつりと落ちる
私の泪が土に滲みる





深々とした雪のなか
お薬師様が祀られているお堂へ向かう私のことを
鹿は 木は 山は 見つめていた

古い小さなお堂の横には大きな針葉樹と石燈籠
背後には大きな岩があり
その上にお不動様が鎮座して居られる
これらは皆 いつからここに居られるのだろう

小さな銅鑼を鳴らし        手を合わせる

風が銅鑼の音を拾い
      雪を宝石のように舞い上げながら
                  遠くの峰まで運んでゆく

私から言葉が消える――


遠くを見遣ると 鹿が二頭 こちらを見つめている

(ここには言葉など存在しない
 私を見つめる 視線があるのみ)

その夜私は 大岩の上の熊と
満天の星空が婚礼をあげる夢を見た





声が一つ 俺に飛び込む
無意識に 泪が溢れ出る
山を霞めるこの靄は 俺の記憶か
道端で泣いているスズランの花は 昔の俺か
胸がぽっかりと空いたその瞬間
勢いよく風が吹き 日の出が虹彩を突き刺した
俺の身体が燃えてゆく
一本の枯草のように 無力に 焼かれてゆく
太陽がたぎり昇る
記憶が焼かれて叫んでいる 幼い俺が燃えながら叫んでいる
そして今こうして鼓動しながら焼かれて叫んでいる
言葉は絶えた
おまえは劫火につつまれ叫ぶ 失いがちに
聞け!おまえの叫びに皆がたぎる!
俺たちはひとつの共鳴箱のなか
響きあう共鳴体
俺たちはひとつの大きな目のなか
見つめあう水晶体
俺とおまえは響きあう 見つめあう
俺とおまえはここにいる
曙のなか


(Kohsuke)



2014年10月17日金曜日

8枚目のキャンバスを前にして

夜明けの波から生まれた風のナイフが

すっと雲に切れ目を入れるとき

こぼれ落ちるあの色が欲しい。

ネコ屋敷の庭にある樹の香りにあらぬ妄想

手には赤いチューブが一本。


ヒビ割れたアスファルトが染まるその色は

あの子の手帳カバーのようで

カゼ薬のようで

囚人服のような色だった。

黄色いチューブを持っているのは誰?

筆もパレットもいらない

作り方は知っているから。


太陽があくびし始めるときの

目にしみるあの色が欲しい。

あと8分すれば消えてしまうから

甘酸っぱい果実だけではもの足りないから

黄色いチューブを持っているのは誰?

私には赤いチューブしかないのだから。

L
09182014
富士山の近くでワイン等を嗜みながら

2014年5月16日金曜日

からのなか


吐き気を催す親友にすがるしかないと君は言う
ならば君は自分のかけらさえもみいだせないだろう

城の中で君主を気取っていてもパレードの中では群集の一人
十字架をかかげる病院で君は注射器の毒で殺される

スーツで二重あごの男は君に億万の富を約束する
母親がくれる涙は全部排水溝の中に流れていく

こんな馬鹿な気持ちをどうしようか
私は友と呼べる人もいないのだ

2014年5月5日月曜日

落下



ペンシルバニアからピオリアへ
国境のスタンプで真っ赤になった小包を運ぶボーイング

88セント ウイスキーを垂らしたブラックコーヒー
をぐいっと喉に流しこむ 

胃腸に空虚な穴があく
蛆がわく 歓楽街でダンスする

時計台の映画スター
まっさかさまに落ちていく

死に神に足りないのはユーモアだけだと
ぼやいた詩人も落ちていく

渋谷のスクランブル交差点の中心にブラジル行のメトロが走る
まっさかさまに落ちていく

ひと ひと ひと ひと ひと エトセトラ
古い友達 手を振って別れたあとでピエロの化粧をおとしている

穴があったら落ちればいい
どこまでも どこまでも落ちればいい

重力の法則を塗り替えればいい
いつまでも いつまでも塗り替えればいい



2014年5月3日土曜日

5月1日木曜日



第一


夜の公園で友と飲む
盲目の女優の噂をする

朝日浴びるまで盆踊り続く
街路樹を走り抜ける黒猫は眠らない

口から吐き出すスーツのような
テプラポルンと夜の列車を見送る

ポケットの中の相棒は息絶え絶えに
耳元で君の囁きと叫びを感じる


KHMSYLM