捨てられたフィルムが繋ぎ合わされ、
もう一度スクリーンの上へ。
1つの形は反射を繰り返して別の形を得る。
垂直な海。川の像は川に投影される。
背徳的な行為はある種の甘美さを帯びているが、
そこで呼吸はできない。
泳ぐこと
―――そうだ、泳ぐことと同様に。
暗闇と、質感、それだけ。
一切の音もなく。
aychan
ジャスティンへ
粘土質の土に愛は育たない
そう 思いつつも
石として生まれた石をシャベル代わりに
お饅頭大のドリアンを植えた
この子は不揃いの石に囲まれた
拾われた石たちは偏に座る
ジャスティンは遠目にも笑顔だった
「ドリアンから芽を出す嘘は
嘘から芽を出す嘘よりタチが悪い」
そう言った 気がした
眠りの中に眠るある夜
僕は眠る日を決めた
11日のベルがなったら僕は眠ろうと思う
向かいにあるロビンソンへは陸橋を
渡っていく 上から2段目の階段
いつもの子だ! 砂埃を操る男の子
「マニー マニー」
子どもとは思えない低い声で手を差し出す
下りには女の子
「マニー マニー」
僕を僕とは知らない女の子
彼女の目に映る景色に合う色は何色だ
考えは及ばず
黄色い驟雨が差し迫る空から降り注いだ
本日は晴天なり
11日のベルがなったら僕は眠ろうと思う
一昔前 頭の片隅にある私立図書館で
理想の女性の手引きを読んだ事がある
その時はレンタルカードを瞼の上に
置き忘れ 本は借りられなかった
記憶は消える予定を記録している
本は目の前だ!
今日という日 ジャスティンは僕に
アナベルリーという女性を返却した
11日のベルがなったら僕は眠ろうと思う
ピエロ 舞台 ジプニー バヤポ ナチョス
高速道路 排気ガス 埃 夕焼け 墓地 花 戦闘機
停留所 インコ 植民 教会 パラポ 魔法 ピエロ
僕はジャスティンにハグをした
翌朝ドリアンは芽を出した
11日のベルがなったら僕は眠ろうと思う
試食コーナー 一口大に切られた梨
5歳くらいの男の子 隣はたぶんお姉ちゃん
背丈は僕の腰くらい
ぱくぱくと口に頬張るその姿 嬉しげだ!
美味いかと聞くと「おいしい」とうなずく
「お兄ちゃん!ようじあと1本しかないよ!」
と僕にくれた
みずみずしく さっぱりした甘さ 確かな甘さ
美味いよと頷いた 梨は買わなかった
誰がためにベルはなる、
2015年9月 パンパンガ州 クラーク
だいち
冷たく湿った風が
私の肌をそっと撫でる
私を傷つけることもなく
私を苦しめることもなく
蝉の鳴き声が耳を刺す
雨雫をまとった紫陽花は
枯れて刈り取られてしまった
私を撫でるこの風も
いずれどこかへいってしまうのだろうか
この冷たさも
この感触も
Pan
クレソンという名を聞いたとき
しどろもどろな根っこを引っこ抜かれた
触れた言葉は戸惑う頭の隅
触れたことない手と踊りだし
老人をかぶった若者の足跡の先
清流の隅っこに生える名前を導かれた
冷えた言葉は悴む指の端
するりと抜ける根の感覚と歌いだし
影を作る明日の満月と骨組みの変わらない傘
忘れてもソーセージは待っている
食べようぞ クレソンを添えて
コーヒーの香りが起こす朝
ひとは根っこを生やしに出掛けてく
年輪を泳ぐ魚と白鯨のキスを忘れて
2015年5月
蓼科 パルナソス にて
だいち
なんだ、団子か
味なんて そんなのどうだっていい
やつらは真っ黒な胡麻ダレを身体に塗ったくって
甘い香りで誘うんだ
何したって中身は真っ白のまま
なんも変わっちゃいない
よし、みんなまとめて串刺しだ
うまかろう
Pan
「イメージの裏切り」に寄せて
これは詩ではない
ただの言葉の連なりであって
これは言葉ではない
ただの文字の連なりであって
これは文字ではない
ただの線の連なりであって
これは線ではない
ただの点の繋がりであって
これは点ではない
ただの紙に映る夜空であって
これは夜空ではない
ただのパイプであって
パイプはパイプでなくて
2015年4月19日
だいち
おはよう、の四文字が無くなる時
本の館に火を付ける時
子犬が子犬でなくなる時
煙が水に変わる時
音楽が騒音に変わる時
キャンバスにナイフを突き立てる時
青くて丸い箱庭の中で生きるしかない僕たちは
気まぐれに注がれた砂糖水のなかで
溺れ死ぬしかないのだろうか。
L
(4月5日、2015年、10時16分の5時間前)