2016年10月2日日曜日

言葉の中の生き物

びちゃびちゃと生臭いにおい
夜目が覚めて
ベッドの下を覗くと
そこには広い海があって、
魚達がどんなに言葉を食べても
腹が満たされないと泣いている

いっそ叫べよ
僕はこんなにも
どうしようもなく生臭いものだと

けれども
水面には死んだ言葉がぷかぷかと浮いていて、
遠くに流されては
見ず知らずの者の腹を満たしていく

君の中のやつらが覚める朝、

君はゆっくり死んでゆく

(J)

2016年9月30日金曜日

ダンス

1

黒いフードを被った天使に
胸のなかをぎゅっと掴まれる
炭酸水を注ぎ込まれて
しゅわしゅわと胸がしびれる
重力を失う
世界がほんの少し軽くなる

当たり前に来ると思っていた明日は
当たり前でない今日になる

彼らは星の光に照らされて、
拍手の音を聞く間もなく
せっかちなステップを踏んで
プレゼントされたたくさんの花束を抱え
そのまま夢の世界に行ってしまう

2

毛むくじゃらのお腹の中
キュルキュルと小さい虫が
踊る音が聞こえる

心臓の精一杯のビート

レンズにそっぽを向ける瞳
白目には茶色いシミ
毛の薄くなった鼻頭
柔らかくなった肉球と笑顔

久しぶりに排水溝の掃除をしていたら
目の前がぼんやりとした

3

真冬の日向ぼっこ
ビーチでのかけっこ
草むらでのじゃれあいっこ

さようなら、よりも、またね
気休めのお祈り

どんなにいい写真家だって、画家だって、作家だって役立たず
胸に手をあてると
そこにはダンサーがいる


2016916日、相棒の帰りを待ちながら)

(L)

2016年1月9日土曜日

Re:play


捨てられたフィルムが繋ぎ合わされ、
もう一度スクリーンの上へ。
1つの形は反射を繰り返して別の形を得る。
垂直な海。川の像は川に投影される。

背徳的な行為はある種の甘美さを帯びているが、
そこで呼吸はできない。


泳ぐこと
―――そうだ、泳ぐことと同様に。
暗闇と、質感、それだけ。

一切の音もなく。




aychan

2015年9月27日日曜日

眠りの中に眠るある夜に


                           ジャスティンへ

粘土質の土に愛は育たない
そう       思いつつも
石として生まれた石をシャベル代わりに
お饅頭大のドリアンを植えた
この子は不揃いの石に囲まれた
拾われた石たちは偏に座る

ジャスティンは遠目にも笑顔だった
「ドリアンから芽を出す嘘は
嘘から芽を出す嘘よりタチが悪い」
そう言った       気がした

眠りの中に眠るある夜
僕は眠る日を決めた
11日のベルがなったら僕は眠ろうと思う

向かいにあるロビンソンへは陸橋を
渡っていく        上から2段目の階段 
いつもの子だ!   砂埃を操る男の子
          「マニー   マニー」
子どもとは思えない低い声で手を差し出す
下りには女の子
          「マニー   マニー」
僕を僕とは知らない女の子
彼女の目に映る景色に合う色は何色だ
考えは及ばず
黄色い驟雨が差し迫る空から降り注いだ
本日は晴天なり
11日のベルがなったら僕は眠ろうと思う

一昔前    頭の片隅にある私立図書館で
理想の女性の手引きを読んだ事がある
その時はレンタルカードを瞼の上に
置き忘れ    本は借りられなかった
記憶は消える予定を記録している
           本は目の前だ!
今日という日    ジャスティンは僕に
アナベルリーという女性を返却した
11日のベルがなったら僕は眠ろうと思う

ピエロ  舞台  ジプニー バヤポ  ナチョス 
高速道路  排気ガス  埃  夕焼け  墓地  花  戦闘機  
停留所  インコ  植民  教会  パラポ  魔法  ピエロ

僕はジャスティンにハグをした
翌朝ドリアンは芽を出した
11日のベルがなったら僕は眠ろうと思う

試食コーナー     一口大に切られた梨
5歳くらいの男の子 隣はたぶんお姉ちゃん
背丈は僕の腰くらい
ぱくぱくと口に頬張るその姿    嬉しげだ!
美味いかと聞くと「おいしい」とうなずく
「お兄ちゃん!ようじあと1本しかないよ!」
                                                   と僕にくれた
みずみずしく  さっぱりした甘さ  確かな甘さ
美味いよと頷いた               梨は買わなかった

誰がためにベルはなる、

               
                2015年9月 パンパンガ州 クラーク



だいち


2015年7月20日月曜日

愛雨


冷たく湿った風が
私の肌をそっと撫でる
私を傷つけることもなく
私を苦しめることもなく


蝉の鳴き声が耳を刺す
雨雫をまとった紫陽花は
枯れて刈り取られてしまった


私を撫でるこの風も
いずれどこかへいってしまうのだろうか
この冷たさも
この感触も





Pan

2015年5月11日月曜日

根っことソネット






クレソンという名を聞いたとき
しどろもどろな根っこを引っこ抜かれた
触れた言葉は戸惑う頭の隅
触れたことない手と踊りだし

老人をかぶった若者の足跡の先
清流の隅っこに生える名前を導かれた
冷えた言葉は悴む指の端
するりと抜ける根の感覚と歌いだし

影を作る明日の満月と骨組みの変わらない傘
忘れてもソーセージは待っている
食べようぞ クレソンを添えて

コーヒーの香りが起こす朝
ひとは根っこを生やしに出掛けてく
年輪を泳ぐ魚と白鯨のキスを忘れて



20155
蓼科 パルナソス にて





だいち